最近キャリア自律という言葉を見聞きするようになりました。

それはいったいなぜなのか?

今回は、キャリア自律が今の時代になぜ必要なのかと、昔からいわれている「自立」との違いについてお伝えしたいと思います。

自立と自律の違い

自立とは「独り立ちすること」を意味します。
つまり、他人に頼らず自らの力で生活していけることを自立といいます。

社会人になって、働くことでお金を稼ぎ、独りで生活できるようになったら自立といえるでしょう。

そういった意味では、今も昔も自立は変わらず存在します。

一方で、最近は「自律」という言葉も良く見聞きするようになりました。

自律とは「自分を律する」ことで、セルフコントロールを意味します。

自分の意思を持ち、自ら考えて選択し、行動することが自律です。

例えば、生活のため、お金を稼ぐために、仕事に就くことを希望したとします。

その際に、職種や環境、働き方などを考えず、親や他人から紹介された仕事に就いたとします。

その結果、何とか独りで生活できるようになったら「自立」はできたことになります。

ただし、仕事の中身ややりがいでみたときに、満足できていなかったり、自分の意思で仕事を選んでいなければ、自律できたとはいえません。

自律とは働き方、仕事の内容を自分で決めて、マイルールを定め、そのルールに従い行動することで、自分自身のやりたいことや夢に向けて実行することを意味します。

最近は、この自律のことを「キャリア自律」と呼び、仕事面のみならず、私生活を含めた人生全般を指しています。

つまり、自律は気持ちの面を含んだ内的な要因を含んでいる点が、自立とは大きく異なっています。

キャリア自律がなぜ必要か

一昔前までは、「就職=就社」といった考え方があり、一度会社へ入れば定年退職まで会社が面倒を見てくれた時代でした。
つまり、経済的な「自立」さえできていれば、生きることに困まりませんでした。

しかし、時代が変わり、自立だけではなく、「自律」が必要になってきました。

背景は以下の通りです。

人生100年時代になった

健康寿命の増加により、人は100年生きる時代になりました。

これまでは60歳で定年し、残りの人生はのんびりと生きようと考えていた人たちも、定年後に40年を生きなければならない状況です。

物価上昇などもあり、いくら生活資金を貯めていても不安だと思います。

それに加えて、定年以降の働き方や生き方は、自分自身で決めていく必要性があり、60歳時点でキャリア自律ができていなければ、路頭に迷う恐れもあります。

逆に現役時代から、キャリア自律ができていてキャリアの選択肢が多様であれば、定年後はいきいきとした人生を送れる可能性もあります。

定年後の不安

企業に勤める人の定年は60歳までです。そして、高年齢者雇用安定法により高齢者雇用確保措置が定められ、自身が望めば65歳までの雇用は確保されます。

また、2021年度の法改正で「高年齢者就業確保措置」が追加され、70歳までの継続雇用が努力義務ですが、追加されています。

上記をみれば、70歳まで働けると楽観的に考えてしまいますが、仕事上の立場や、待遇面など現役時代と比べると見劣る傾向があります。
同じ仕事内容でも、給与が半分になり、かつての部下が上司になる環境に耐えきれない人もいるのではないでしょうか。

早い段階からのキャリア自律により、セカンドキャリアの選択肢は多く持っておきたいところです。

<参考>
「令和2年 高年齢者の雇用状況集計結果」(厚生労働省)

ダイバーシティ(多様性)により「遅い昇進」が機能しなくなってきた

日本には従来から「遅い昇進」という労働慣行があります。
昇進を限りなく遅らすことで、賃金上昇のピークを後ろにずらし、従業員に長い間働いてもらう慣習です。

しかし、近年は年功序列賃金制の考え方がなくなりつつあり、さらにグローバル化の流れも加わり、多様なものの考え方が浸透しています。

つまりダイバーシティです。

人の価値観が多様になり、昇進などへの関心が薄くなってきた近年では、長い間同じ企業に勤めるメリットがなくなってきています。

生涯で複数の会社や職業を経験する可能性が高まっている現代では、自分自身で人生設計をして、選択&行動できるキャリア自律がないと生きにくい時代になっています。

VUCA時代の到来

VUCAとは「変動性(Volatility)」「不確実性(Uncertainty)」「複雑性(Complexity)」「曖昧性(Ambiguity)」の頭文字からとった言葉です。

世の中が目まぐるしく変わるため、予測が困難であるといった意味を持ちます。

予測できなかった、新型コロナの流行もVUCAを加速させています。
テレワークなどの新しい働き方が加速し、今までのスタイルが変わってしまいます。

つまり、変化に柔軟な思考がないと、時代の変化についてゆけなくなっています。

これもキャリア自律が必要な背景のひとつです。

企業側の視点・キャリア自律で生産性が向上する

キャリア自律できているかで、働くモチベーションは大きく変わります。

そして、モチベーションは生産性に大きく影響しています。

きっかけは、人の感情が生産性に影響を及ぼすことが分かりだした、ホーソン実験からです。

ホーソン実験

1900年代前半にアメリカで実施された、生産性向上のための調査のことです。

工場において、環境などの条件を変えた照明実験、組み立て実験、面接実験、バンク配線実験の4つを実施しその結果、人は人間関係や感情面が生産性に影響を与えるという結論が導き出されました。

つまり、仕事は、嫌々やるよりも、モチベーションが高い方が生産性が高くなることが分かってきたわけです。

企業内でのキャリア自律施策

近年、大手企業を中心に従業員のキャリア自律を促す施策が増えてきています。

副業の推奨をはじめ、企業内転職といわれる社内公募制、社内FA制度や、個人のキャリア開発を支援するキャリアコンサルティングなどです。

これからの生き方は「自立」+「自律」

これからは、ますますキャリア自律している人が評価される時代になってゆくと思います。

そして、何より、自分で決めた人生に向かって、自分でキャリアデザインし行動することは、長い人生を活き活きと過ごすために必要な意識になるのではないでしょうか。

<参考>
こちらの本を読むと、キャリア自律の必要性をより実感いただけるかもしれません。

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