従業員のキャリア自律を推進する制度としてセルフ・キャリアドックがあります。

キャリアコンサルタントは、セルフ・キャリアドック導入のために重要な役割を担います。

そこで、今回はセルフ・キャリアドック制度に対するキャリアコンサルタントの役割、キャリアコンサルタント向け研修など、組織内で活動しているキャリアコンサルタントの方に向けた記事を書いてみました。

セルフ・キャリアドックとは

セルフ・キャリアドックそのものは「仕組み」のことで、キャリアコンサルティングやキャリア研修など組織内従業員のキャリア形成支援を総合的に実施する取組みのことです。

国も推奨している「セルフ・キャリアドック」は、導入を推進する役割をキャリアコンサルタントが担います。
(「セルフキャリアドック」ではなく「セルフ・キャリアドック」と呼ぶみたいです。)

特にキャリアコンサルティング面談では、従業員一人一人の価値観・能力・強みなどと寄り添い、ありたい姿に向けて一緒に伴走するキャリアコンサルタントの役割が重要だと思います。

キャリアコンサルティングを通して、一人一人のモチベーションや自己肯定感の向上が効果として表れ、その先にあるものが、キャリア自律です。

キャリア自律により、主体的な行動が期待できるようになり、組織成長、生産性の向上などに結びつきます。

従業員のキャリア自律の効果は、テクニカルな研修、リスキリングなどの人事戦略の効果性を高めることになるので、そもそもキャリアコンサルタントを国が国家資格化した理由は、生産性の向上であると理解しています。

セルフ・キャリアドックは組織内キャリア形成に焦点が充てられていますが、社外の個人に対する支援も、支援方法こそ違いますが根っこの部分が同じだと思います。

<参考:厚生労働省>

・セルフ・キャリアドックの説明(厚生労働省)

・「セルフ・キャリアドック」導入の方針と展開(厚生労働省)

・セルフ・キャリアドックで会社を元気にしましょう!(厚生労働省)

キャリアコンサルティングの導入状況

令和3年度「能力開発基本調査」(厚生労働省)によると、キャリアコンサルティングを行うしくみを、正社員に対して導入している事業所は41.8%となっています。

昔よりも増えてきている半面、課題もあります。

それは、導入事業所で実際にキャリアコンサルティングの相談を受けているのはキャリアコンサルタントであると回答した事業所は僅か8.8%です。

つまり、キャリアコンサルティングを実施している企業や組織でも、キャリアコンサルタント以外が相談を受けているケースが多いということです。

上また、司との定期的な面談により、成り立っているわけです。

セルフ・キャリアドックの前にやること

セルフ・キャリアドック導入の前に前提条件があります。

経営層、管理職、そして従業員の理解が必要です。

経営理念、経営戦略、ビジョンなどの周知

組織が向かう方向、ありたい姿などを経営層から管理職、従業員に発信し共有することです。

その上で、キャリア自律が組織にとって必要であることの理解が必要になります。

つまり、この時点でキャリア自律への理解が得られなければ、セルフ・キャリアドックの導入効果は得られないと思います。

セルフ・キャリアドックの目的を明確にする

人事制度としてセルフ・キャリアドックを導入する仕組みを従業員の対して説明します。

セルフ・キャリアドックの根拠法として、職業能力開発促進法がありますが、法律があるからと説得するのではなく、ここでも従業員のキャリア自律が、個人にとって大きな意味をなすものであることを説明する必要があります。

問題点・課題の明確化

従業員のキャリア自律にあたり、あらかじめ現状の問題点や課題を明確にしておきます。

まずは管理職の教育と理解から

従業員を直接的に評価する管理職にキャリア形成に対するリテラシーがないと、セルフ・キャリアドックが成立しません。

特に組織の既成概念を壊すような改革に対し、積極的になれない管理職もいます。

キャリア意識が芽生えると、部下の離職・転職に繋がるとの勘違いしているケースも!

そもそも傾聴スキルがない上司もいますので、まずは管理職の教育、セルフ・キャリアドックへの理解を優先します。

セルフ・キャリアドックでやること

キャリアコンサルティング

セルフ・キャリアドックでは健康診断と同じように、キャリアの定期的な検診を目標としています。

そして、キャリアの定期健診(キャリアコンサルティング)は、上司よりもキャリアコンサルタントが望ましいとされています。
従業員が主体的に考える習慣を身につけるために、それを促す専門家がキャリアコンサルタントだからです。

キャリアコンサルティング面談では、前述した価値観・能力・強みなどと寄り添い、目標設定、対策への指導、フォローアップまで実施できると良いです。

ただし、キャリアコンサルタント自身のスキルは人事寄りの人が多いため、テクニカルスキルに対する対策や指導ができないケースもあります。
より専門性の高い人へのリファーなども考えながら、しっかりとした人的ネットワークを構築しておきましょう。

なお、最近は「人事ニア」といった造語もあります。
人事ニアは「人事」+「エンジニア」の両スキルを併せ持つ人材のことです。

私自身も両方のスキルをもつキャリアコンサルタントでありたいと感じ、パラレルキャリアに取り組んでいます。

深くでなはく、浅く広く知識を持つことが、守備範囲の広いキャリアコンサルタントになる条件だと思います。

キャリア研修の企画と実施

新人研修や中堅社員向け研修、管理職研修など各世代、役割毎のキャリア研修を実施します。

講演会やセミナー、Eラーニングなども絡ませてると効果的です。

リスキリングなどの学びなおしは、テクニカルスキル寄りですが、個人のキャリアと結び味付けることで、学びの効果が格段に上がると思います。
そのあたりの促しもキャリアコンサルタントの役割だと思います。

制度の見直し

テレワークや副業、越境学習などの施策導入にもキャリアコンサルタントが積極的に関わると良いでしょう。

これら施策と、セルフ・キャリアドックを切り離す必要はないと思います。

環境面の施策は、働きやすさはを支援し、従業員のモチベーション向上に期待がもてます。

つまりは、キャリア自律の促進に繋がります。

導入後はPDCAを

セルフ・キャリアドック導入後も、面談者へのフォローアップも含め、効果、問題点、課題などに基づき、改善を行います。
つまり、組織としての人的課題点を明らかにし、経営層とも共有の上、改善を行いセルフ・キャリアドック自体の質を高めてゆきます。

やることは企業・組織毎に異なる

企業や組織の経営戦略により、セルフ・キャリアドックの導入の目的や実施形態は変わります。
経営戦略の中でも、人事戦略や組織が抱えてる課題により、施策が異なってきます。

リスキリングを含めた制度を構築する

リスキリングは企業が主体で行う従業員の学びなおしです。

最近よく聞くリスキリングですが、ITリテラシー向上も含めたDX教育がメインです。

リスキリングはIT分野に特化した企業・組織よりも、どちらかというとデジタルツールを活用する側の人材の育成が重要です。

キャリアコンサルタントは、セルフ・キャリアドックの導入と合わせて、リスキリングの推進に向け関わることになります。

リスキリングが効果的に作用するためには、従業員の仕事へのモチベーションが向上が不可欠です。

主体的に自ら学ぶことができるようになる、つまりキャリア自律を促すことが、組織内におけるキャリアコンサルタントの役割です。

ちなみに、キャリアコンサルタントはITリテラシーが低い傾向があるため、キャリアコンサルタント自体もリスキリングの対象です。

セルフ・キャリアドックの講習実施機関

セルフ・キャリアドック運用のためのスキル習得方法のひとつに、キャリアコンサルタント更新講習の受講があります。

以下にセルフ・キャリアドックに関する講習を開講している機関をご紹介します。

・あしあとみらい研究所

・一般財団法人雇用開発センター

・Cマインド

・セルフキャリアデザイン協会

・日本キャリア開発協会(JCDA)

・CARICON.CO (キャリコン.シーオー)

・リカレント

・キャリアカウンセリング協会

活用できるその他の講習

セルフ・キャリアドックで活かせる、その他の更新講習についてご紹介します。

価値観分析(資格の大原)

資格の大原では「キャリアコンサルティングにおける「価値観」分析のあり方」という興味深い更新講習があります。

価値観を知るための支援力は、組織内キャリア支援の場においても強化しておきたいスキルです。

(以下の紹介にはプロモーションが含まれています)

・資格の大原

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