新人さんや部下に対して、よく上司や先輩が「わからないことがあったら聞いて」と伝えている風景があります。
しかし実際には、聞かれたことがなかったり、逆に新人さんや部下の立場では「聞いて」と言ってた割には聞いてほしくなさそうな態度を相手に感じたりしたことはないでしょうか?
「わからないことがあったら聞いて」。もちろん、その声かけ自体は素敵なことですが、これだけで十分でしょうか?
今回は、心理的安全性の視点から「わからないことがあったら聞いて」を効果的に機能させる方法をお伝えできればと思います。
【新人や部下の視点】「わからないことがあったらなんでも聞いて」は聞きづらい
実は、上司や先輩から「わからないことがあったらなんでも聞いて」といわれても、なかなか聞くことができないです。
以下のような職場の雰囲気に原因があります。
【聞きづらい代表例】
・忙しそうで、聞きづらいオーラを放っている
・聞いても「後にして」と言われる
・聞きたくても席にいない
・聞くと説教っぽく言われる
・自分で考えなさいと言われる
・そのそもコミュニケーション不足で聞きづらい
聞きたいことや困ったとがその場で解決できない時間が続くと、生産性にも影響が出てきます。
そうならないように、相談しやすい、心理的安全性が確保された場づくりが大切になります。
新人や部下の捉え方と、先輩や上司は捉え方は違うことをまずは認識しておきましょう。
【上司や先輩の視点】聞きづらい雰囲気を作っている
「わからないことがあったら聞いて」は人に教える立場になると、一度は口にしたセリフではないでしょうか。
社交辞令のような扱いになっており、わからなことを聞くのは当たり前と考えている方は多いと思います。
しかし、実際に質問が少ない、聞いてくれないと嘆いている方も。。。
自分では認識していなくても、聞きづらい雰囲気を作ってしまってるかもしれません。
【聞きづらい雰囲気代表例】
・聞かれても耳だけ、聞く姿勢をとっていない(手は別作業)
・自分の考えが述べれるまで質問を受け付けない(指導としての意識が高い)
・「わからないことがあったら聞いて」と形式的に返したあとフォローアップをしていない
何れも、自分自身のことで手一杯なときにやってしまう態度です。
これが常態化している職場は、心理的安全性が低く、生産性も上がらない状態です。
では、これらの状況を少しづつ改善する方法について述べたいと思います。
「聞きやすい」」場づくり
新人さんや部下が相談しやすい、聞きやすい場づくりはどうすればいいのか、その手段についてお伝えします。
これらは心理的安全性を高めるための取り組みも兼ねます。
まずは「わからないことがあったら聞いて」を伝える
冒頭でお伝えした、「わからないことがあったら聞いて」は基本です。
相談があれば受け入れる意思を示すためにも、最初に必ず伝えましょう。
ただし、これだけでは形式的な印象です。
これからお伝えする手段を組み合わせてみてください。
気持ちを伝える
「わからないことがあったら聞いて」にプラスして気持ちを添えると効果的です。
形だけではなく、「君の力になりたい」「協力したい」といった思いも一緒に伝えます。
例えば
・「君の成長が組織の力になるから、わからないことがあったらいつでも聞いてほしい」
・「仕事を早めに覚えてもらえるととても助かるので、わからないことがあったら聞いてほしい」
といった感じで、聞かれることを歓迎する意思を伝えると、聞くことに罪悪感を感じにくくなります。
なお、私は「聞いてもらえると嬉しい」と伝えるようにしています。
頼られることは素直に嬉しいからです。
定期的に声をかける
合間をみて、「調子はどう?」と声をかけて、相談しやすい場を作ってあげましょう。
声をかけることで、話すタイミングが生まれます。
ただし、直球で「何か分からないことはない?」と聞いてしまうとその場ではすぐに答えれないものです。
聞くために、心の準備が必要な時があります。
雑談の中から、相談しやすいようにうまく引き出してください。
例えば
・「このあたりって、僕も新人の時に手こずったけどどう?」
また、突然話しかけても緊張して、質問ができない場合もあります。
その場合は、あらかじめ時間を確保する1on1ミーティングなどを活用しましょう。
1on1ミーティング
上司と部下が定期的に話をする場のことを1on1ミーティングといいます。
つまり1on1の場と時間を定期的に用意しておけば、相談しやすい環境ができます。
最近は推進している組織も増えていますが、もちろん現場レベルで取り組むことも可能です。
1on1の注意点は上司が話をする時間ではなく「聞く時間」だと心得ることです。
そして、上司が部下を評価したり、目標設定を確認し合う時間ではないということです。
テーマは無理に決めずに、仕事の内容にこだわることはなく、部下が話したいことを自由に話せる時間であると認識しておきましょう。
仕事の中でのわからないことだけではなく、相手が望むならプライベートの話題でも歓迎します。
話題を限定しないことで、何でも話せる安心・安全な場とします。
ただし、部下は聞きたいことがうまく言葉で表せない場合もあります。
よく観察して、言い換えた表現を提示するなりして、寄り添いましょう。
定期的に何でも話せる安心・安全な場があることで、わからないことがあっても安心して聞くことができるようになります。
クローズドクエスチョンから徐々にオープンクエスチョンへ
前述の通り、いきなり「困ったことない?」、「わからないことはない?」と聞いても部下はなかなか言い出せないと思います。
徐々に語りを促す問いかけができるといいでしょう。
最初はYesかNoで答えやすい問いかけからはじめ、徐々に「どういった所が難しいと感じた?」といった具合で、オープンクエスチョンに発展すると、話しやすくなるはずです。
主体性も心理的安全性の高い場があるからこそ育まれる
なんでも聞けるようになると、自分で考えたり、問題を解決する力が育たないのでは?と思われでしょう。
もちろん、主体性や問題解決力を育てるためには、「なんでも聞いていいけど、そこは自分自身で解決してみよう」といった促しも必要になると思います。
まずは、「わからないことがあっても聞くことができる安心安全な場」を優先し、良好な関係性が構築できたあとで、徐々に主体的な行動を促せるように支援できれば良いと思います。
一般的な職場では、「主体的に行動してほしい」といった思いだけが先行し、突き放してしまうことで関係性が悪くなり、若手の離職増加などに繋がっていると思います。
「わからないことがあっても安心して聞くことができる場づくり」を意識しておけば、良好なコミュニケーション、主体性や問題解決力を育てるなどの他にも、離職防止にも効果的です。
まずは、簡単に始めることができる、「わからないことがあったら聞いてもらえると嬉しい」など「気持ちを添える」ことから取り組んでみてはどうでしょうか。
最後に、他にも心理的安全性に関する記事を掲載しています。
以下も合わせて参考ください。